アシナガバチは1年をどう過ごす?

春夏秋冬

日本は四季があり、その季節の変わり方によって私たち人間の生活様式も変わってくるように、アシナガバチも一年の中で季節によって違った生活をします。

では、アシナガバチは一年をどう過ごすのでしょうか。その生活の変わり方に迫っていきましょう。

女王蜂の冬眠からの目覚め

春は全ての生命が活発に活動を開始する時期です。アシナガバチも同様に、春になると昨年の寒い冬を越した女王蜂が冬眠から目覚めます。

目覚めた女王蜂は、まず新しい巣を作るために動き始めます。新しい巣は、昨年度に巣を作った場所を女王蜂が覚えているため、そこに再び作る傾向があります。

冬眠から目覚めたばかりの女王蜂は体力がないため、花の蜜を集めたり花粉を食べたりすることによって、エネルギーを補填していくのも特徴です。

新しいコロニーの作成開始

アシナガバチの女王蜂が巣を作る場所を決めれば、そこに新しい巣、そしてその年に活動をする新しいコロニーの作成を開始します。

女王蜂が木の皮などを噛み砕いて巣の元となる素材を作り、小さいアシナガバチの巣が作られていきます。この時の巣穴は多くて3個ほどしか無いのが特徴です。

そしてわずかな巣穴に卵を産み付け、その幼虫が20日ほどで成虫になっていきます。成虫になった働き蜂は、女王蜂の巣作りを代行します。

このように、アシナガバチの春は夏の活動の最盛期の土台を作る準備期間であると言えるでしょう。

産卵が活発に行われる

蜂の多くは、気温が暖かくなるにつれてその活動が活発になるという特性があります。アシナガバチも、夏が活動と産卵の最盛期であるのは間違いありません。

7月から8月は、女王蜂が盛んに産卵を行い、そして働き蜂も個体数がどっと増えることから、巣作りが急ピッチで行われていきます。

この時期に、次の世代を産むために重要な役割を果たす、新しい女王蜂が誕生してきます。

攻撃性が高くなる時期

アシナガバチは基本的に穏やかな性格と言われていますが、夏は攻撃性が高くなってしまいます。

攻撃性が高くなるのは、やはり巣や幼虫を守るためであることが大きな理由です。人間が巣に近づくことでアシナガバチに襲われることも、この時期によく起こります。

また、アシナガバチは肉食であることから、幼虫に餌を与えるために芋虫などの他の虫の幼虫を捕食していきます。

生殖行為を行う時期

秋はアシナガバチが次の年度にコロニーを作るため、生殖行為を行う時期になります。

新しく生まれた女王蜂とオス蜂は、快晴で環境が整った日に集団で空中を飛び、そこで交尾を行います。これによって、女王蜂は体内に新しい受精卵を宿すことができます。

なお、アシナガバチは受精した卵子は全てがメス蜂になるため、この時のお腹にある受精卵の中に翌年度の女王蜂から働き蜂の全てが存在しています。

女王蜂は冬を越す準備に入る

交尾を終えて受精卵を宿した女王蜂は、すぐに産卵をするわけではありません。受精卵をお腹に抱えたまま、厳しい冬を越すための準備に入ります。

寒さをできるだけしのぐことができるような場所を探します。その場所としては、木の中にできた空洞の中や、民家の狭い隙間などがあります。

アシナガバチは寒さが苦手であるということから、この越冬場所を探して準備をするのも、種を残すためには重要なタスクになっているようです。

女王蜂だけが冬を越す

冬はアシナガバチにとって、一番孤独な時期だと言えるでしょう。なぜならば、冬を越すことができるのは、一つのコロニーにおいて新しい女王蜂だけだからです。

夏の間活動をした働き蜂は寒さに耐えることができないため、秋から冬になるにかけて死んでしまいます。そのため、女王蜂は群れを捨てて冬を越すことになるのです。

女王蜂は単体で越冬をすることが多いですが、その他のコロニーの女王蜂と一緒になって一つの越冬場所に集まるということもあります。そのため、完全に孤独ではないケースもあります。

ただ何もせずにじっとしているだけの時期

冬はアシナガバチにとって、無の期間となります。ただ何もせずに、越冬場所で固まって冬眠をし、時間が過ぎるのを待つだけだからです。

女王蜂が冬眠をするのは、冬の期間に余計なエネルギーを使用しないためです。女王蜂が死んでしまうと、お腹の中の子供達も死んでしまいますので、冬の時期の女王蜂の過ごし方が重要だと考えていいでしょう。

そうして長い冬が終わって春が来れば、また新しいコロニーを作成するために活動を開始していきます。

その他のアシナガバチ関連の記事はこちら → アシナガバチの雑学

まとめ

アシナガバチの一年は、四季によって明確に活動が変わっていきます。そして、一年単位で一つのコロニーが生まれて終わります。

人間からしてみると一年は短いですが、一年を精一杯生きるアシナガバチにとっては、その一年がとても長いものであるのかもしれません。